手首の親指側が痛む「ドケルバン病」の原因と治療 〜現代はスマホが原因のことも〜

手首

手首の親指側のラインに痛みが走る。親指を広げる動作が辛い。

このような症状があればドケルバン病の可能性があります。
聞き慣れない病名かもしれませんが、人名が病名になっているからです。スイスの外科医 “de Quervain” によって1895年に詳細に報告され昔から知られている疾患です。

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ドケルバン病の原因

痛みの原因は親指を広げたり伸ばす働きをする2本の腱(長母指外転筋腱・短母指伸筋腱)と、それらが通る腱鞘というトンネル状の構造物との間が擦れて炎症が起こるためと考えられています。手首の親指側には外表から骨の突起が触れますが、この部分における炎症です。

ドケルバン病に罹患しやすい方の特徴

症状の出やすい方の特徴として、

・手を酷使する職業に就いている
・日常的に手をよく使用する
・妊娠・授乳中
・糖尿病がある
・更年期の女性
・透析中である

ということが挙げられます。最初の手を酷使する職業では調理師、美容師、楽器の演奏者、介護士などが多いですがその他にも様々です。私の診療では出産後の育児で罹患される方が多い印象があります。特に首が座る前だと抱っこして頭を支える動作が誘因になりやすいのでしょう。

本疾患は男性よりも女性の方に遥かに多く罹患します。その理由は、

親指を広げた時の腱の走行する角度が女性の方が大きい

という解剖学的な構造が挙げられます。また更年期の女性に多いのは

女性ホルモンのバランス不良

によるものとも考えられています。

また腱鞘部において腱と腱の間に隔壁という構造が存在するタイプの方は症状が出やすいともいわれています。
近年はスマホの普及で親指を酷使することが多くドケルバン病の原因にもなっています。

ドケルバン病のセルフチェック動画

痛みを放置してしまうと症状は悪化し難治性となってしまうこともあるため早めの対処が大切です。セルフチェックの方法を下記に動画でご紹介します。親指を中に入れてグーをつくり、手首を小指側へ傾けていきます。その際に手首の親指側が痛む場合は”陽性”であり、ドケルバン病が疑われます。陽性になったらすぐに医療機関を受診して下さい。

ドケルバン病のセルフテスト⏬

アイヒホッフテスト(Eichhoff test)

ドケルバン病と似ている症状を呈する疾患にintersection syndromeというこれまた覚えにくいものがあります。ドケルバン病よりもやや肘寄りに痛みが出現します。いずれにしても症状があれば医療機関を受診して下さい。

さてドケルバン病と診断されたら早めの治療が必要です。

ドケルバン病の治療

まずは消炎鎮痛薬の外用や内服を用います。同時に手指や手首の安静(痛みが出るような動作は控える)も大切です。
ただ日常生活で手を使わないというのは難しいのが現状で、それが痛みの長引く要因にもなっています。それでもなるべく痛みが出ないように意識をすることが症状の緩和に必要だと思います。

症状が強い場合にはステロイドの腱鞘内注射も行われます。ステロイドは炎症を抑える作用が強く、注射後に症状が改善したまま治ってしまうこともままあります。とても有効ですが、注意点としてはその副作用です。ステロイドは腱の組織を弱くしてしまう事もあるため頻回には行えません。また免疫を低下させる副作用もあり、糖尿病や透析中といった免疫が落ちている場合には注射部位における感染症のリスクが上がります。従って注射後はしばらく水など濡れないように気をつけ、保護テープが剥がれないような感染予防が特に大切になります。

手術は最後の手段です。
これまでの治療法を試みても痛みが持続したり、すぐに再発を繰り返す場合に検討されます。術式は腱鞘切開術と呼ばれ、局所麻酔下に行われます。先述した摩擦の原因となっている2本の腱を納める腱鞘を切開します。腱鞘は切開しても手指の動きには特に影響を及ぼしません。

最後に

日々の動作が原因で生じる痛みというのは整形外科に関連する疾患ではよくあることです。痛みが出る前に予防したいところですが、もし痛みが出てしまっったら早急に治療をすることが重要です。
今の時代にまず予防ができそうなのはスマホかもしれません。

関連ツイート

最後に、私の過去のツイートもご参照下さい。

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